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「玄関の手入れをどうしようかと云ふのですよ」
上下のシャツだけといふ奇妙な恰好で房一が台所に降りかけた時、はじめて彼はそこに誰か立つているのに気づいた。
「はあ、それは――」
小谷は房一に話しかけた。
と、房一が台所に声をかけた。
「こゝの消防演習をやつたのだ。そんなに騒ぐことはない」
その直造の耳には、次のやうな言葉が響いて来た。
「それは惜しかつたですな。私などとちがつて学資の心配はなかつたでせうし」
と、房一はひとり言を云つた。
「もう着てみましたか」
「ふむ、さうすると――」
又とぎれた。
「いや、これから往診に行くところだ」
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